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第3章 - 私には未来がある?

No Officeは仕事の未来形?

さて、ここまで私の物語を読んできた方には、私の夢であった「no office」のライフスタイルが現実のものとなり、仕事をするためにオフィスへ通勤する必要のないチームとなったことを知っていただけたかと思います。ここで残っている疑問が1つあります。これはただ私だけの未来なのか、それとも仕事の未来なのか?ということです。

本当に大都市に住む必要がある?

都市は成長しています。アメリカのような先進国でも、最も人口の多い都市トップ20を見てみると 1、過去10年間でほぼ全ての都市が成長を続けていることが分かります。シカゴだけが1%未満の成長率でしたが、フェニックス、サンアントニオ、ダラス、オースティン、シアトルなどの都市は2桁成長を記録し、中には20%以上成長をしている都市もあります!それは果たして本当に必要なことなのでしょうか?

2030年までには、1000万人以上の人口を抱えるメガシティの数が世界中で43都市にもなることが予想されています 2。なぜ私たちはそんな状況になっているのでしょうか?

今、私たちはようやく、これまでとは違う働き方を可能にするテクノロジーが手に入り、大きなメガポリスに閉じこもって暮らす必要がなくなっているのではないでしょうか?もちろん大都市でなくてはダメな人もいますが、皆が揃って大都市で暮らす必要があるとは到底思えません。今こそ、自分のライフスタイルを自由に選ぶことのできる時代だと思います。以前私はポーランドの首都であるワルシャワに住んでいました。それから人口30万人ほどの小さな街に引越しましたが、この場所がとても気に入っています。

渋滞や満員電車で開放的なオフィスに通勤するというのはどうなのか?

これこそが問題の核心です。多くのナレッジーワーカー - コンピューターで頭を使って仕事をする知識労働者 - は郊外に住んでいて、毎日 (だいたい片道1時間ほどかけて) オフィスへ通勤しています。毎日渋滞に巻き込まれることや満員電車に揉まれることがどれほどのストレスになるかは、数え切れないほどの研究で明らかになっています。なぜそんなことをしているのでしょうか?それは、都心のガラス窓に囲まれた開放的な間取りのオフィスへ行くためです。

そう、「開放的なオフィス」です。そこは騒がしく、人々が絶えずお互いを邪魔しあい、自分が歯車の歯の1つでしかないと感じるところ・・・ほとんど仕事ができないところです。しかし、あなたの上司は、そのような場所でこそ創造性やアイデアが次々に溢れ、物理的な近さを共有することでお互いにいい影響を及ぼしているのだと信じて疑いません。

渋滞や満員電車で通勤し、過密した騒がしい部屋のコンピューターの前に座ってストレスを感じています。さらにそれに追い討ちを掛けるように、出席を要求されるたくさんの会議によってあなたの仕事の生産性は激減してしまいます。

これが現代のナレッジワークの標準です。このようにしなければならない必要性は全くありません。実際、多くの人がこの矛盾に気づき、こんなふうに仕事をしたくないと考えるようになってきました。さらに今、Covid-19の状況がそのように考える人を急激に増加させています。

本書をきっかけに、不要なミーティングの時間を減らし、厳選した時間の中で何倍も効率の良いミーティングをするなどして、生産的な時間を取り戻していただけたら幸いです。

オフィスは素晴らしいツールになる・・・ただし、賢く使えば。

私たちの会社は非常に極端です。本当にオフィスがありません。オフィシャルな住所はありますが、社員は誰もそこへ行きません。私たちと同じような会社はたくさんあります。私たちの社員は30名近くになります。ソーシャルメディアサービスを行う会社Bufferは私たちの2倍以上の規模です。ソフトウェアの自動化サービスの会社Zapierは250名以上の社員を抱えています。また、InVision、Automattic (Wordpressのメーカー)、GitLabなど、リモートのチームで働く1000名以上の社員を抱えた会社もあります。

本書のアドバイスは「オールリモート」の会社だけに当てはまるものではありません。会社によってはオフィスや生産拠点とリモートを混ぜた形態を取っているところもあります。すでに複数の都市にオフィスがあり、そういう意味では「no ONE office」ですが、チームメンバーをリモートで働かせたり、週の数日を在宅勤務に当てることを可能にしている会社もたくさんあります。

いずれにしても、ナレッジワーカーは実際にどこからでも仕事をすることができるというのが現実です。頭脳を使えさえすれば、その時の位置座標がどこであるかは問題ではありません。そこにはオフィスがあるわけではなく - 仕事だけがあるのです。

スプーンなんてない。

私は映画マトリックスの大ファンです。映画には印象的なシーンがいくつもあるのですが、中でも特に印象に残っているのは、少年がスプーンを曲げるシーンです。

そのシーンで、少年は主人公のネオにスプーンを曲げるのは不可能だと言っているのですが、マトリックスの中では本当はスプーンは存在せず、曲げることができるのは自分自身だけなのです・・・スプーンではない、ということなのです。

現代の仕事の前提条件がオフィスであるというのは、私にはとても滑稽に思えます。仕事 = オフィスという方程式があるように見えます!

オフィスがあるから仕事をするのではないのです。オフィスはオプションです。オフィスは言うなれば、曲げることができます。なぜなら、本質は以下のことだからです:

オフィスではなく、仕事だけがなされるべきものなのです。

オフィスは必要不可欠なのか?

本書の後半では、なぜ人々はオフィスが仕事に欠かせないものであると考えるのかといったことや、「no office」会社が以下のような問題をいかに解決するかといったことを解説していきます。

  • ビジネスが存在し所在地を表示する
  • ビジネスが本物であることをクライアントに証明する
  • チームメンバーが最高の仕事を行う場所
  • クリエイティブにコラボレーションする方法
  • 効果的で生産的なミーティングをする方法
  • クライアントとの打ち合わせの場所
  • 競合他社と比較する際の指標

これらの懸念やニーズはしかるべきものです。

本書はこれら全てに対処していきます。ぜひ心を開いて変化を受け入れてください。これまで1つの方法で行われてきたことが、より良い結果をもたらす他の方法でなされることがないとは言えないはずなのですから。

かといって、全てがクリアーでバラ色というわけじゃない・・・

そう、「no office」会社の経営には、様々な課題があります。多くの疑問や問題があります。

  • どのようにホームオフィスを設置したらいいだろうか?
  • どのように社内のコミュニケーションを取ればいいのだろうか?
  • どのように協働で作業したらいいのだろうか?
  • いかにして効率的にミーティングやプロジェクト、仕事を進めたらいいだろうか?
  • どのようにしてお互いを繋げ、良好なチームスピリットを保持していけばいいのだろうか?

などなど、たくさんあります。

本書はこれら疑問のほとんど全てに回答を試みています。小規模でオールリモートなグローバル会社を10年以上にわたって経営してきた視点から考察しています。さらに、他の「no office」ビジネスの例も含んでいます。

私たちも全ての正しい答えを持っているわけではありません。より良い職場環境とビジネスの繁栄を創造するという共通の目標のもと、様々なことを実験しています。

COVID-19のパンデミックが新しい働き方を加速させてはいますが、一方で、従来のやり方に慣れ切っている多くのビジネスに一石を投じ、新たな光を当てうるものをこれまで私たちは学び、それを本書で示すことができると確信しています。

現代のための最新の書

この本はオープンソースです - 誰でも簡単に読め、改善や修正を提案できます。私も書いていく過程で学んできました。今後、本書の内容の多くの部分が変更されたり、改訂されたりするかもしれません。それはプロセスです。

ソフトウェアと同じように本書も完成することはありません。

「No Office」はモダンなビジネスのやり方なので、それにはモダンなスタイルの本がふさわしいのです。

Nozbeの最新ソフトウェア製品であるNozbe Teamsでは、私たちはウィークリーでリリーススケジュールを導入しています。毎週、ソフトウェアの新しいバージョンをリリースしています。バグが修正されたり、新しい機能が導入されたり、テキストが改善されたりすると、翌週の月曜日にお客様にリリースされます。この迅速で再現性の高いリリースサイクルを私たちは気に入っています。

この本が完成したら、次は月次のリリースサイクルを導入し、新しいPDFとeBookフォーマットを製作してみようと考えています。そして四半期ごとのペーパーバックの改訂版も考えています。また、全ての変更点等はGithub上で誰でも簡単にリアルタイムで確認できるようにしています。このように、本書は優れたソフトウェアのように扱われます - いつまでも色あせず、常に新しいビジネスのスピードに対応していけるように。

本書の対象者は?

ここまで読んできていただけたなら、この本はあなたのためのものです。:-)

「no office」会社の創設者として、日々努力を続けながら会社の活動に貢献しているチームのアクティブな一員として、私は本書を以下の方を対象に書いています:

  • 全てのビジネスオーナーとマネージャー: リモートワークだけでなく、モダンな技術を取り入れて効果的で生産的な働き方を模索する方。
  • 従業員やチームメンバー: すでにリモートワークを試みている、または試してみたくて雇用主を説得したいと思っている方。
  • チームの誰でも: もっといい働き方があると感じているが、明確な答えが見つけられていない方。

本書は新しい仕事のやり方を模索し、チーム全体を新しいレベルに引き上げるための解決策を探している人にとってのヒントやインスピレーションとなれば幸いです。

1つのキーポイント: オフィスはただのツールにすぎません!

オフィスは仕事をする上で必要不可欠なものではなく、自分の好きなように曲げることのできるツールであるということを忘れないでください。本当に必要なことというのは、仕事を完了させることなのです。

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