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第28章 - 休暇を取ろう

誰もが仕事から離れ、生活や人生のための充電をする必要がある!

「お金で幸せが買えないと思っている人はどのようにうまく使ったらいいかを知らないだけである… 休みをもっと取って、家族や友人と時間を過ごせば人々はもっと幸せで健康になるはずなのに、アメリカ人は長い間、その反対方向へ行ってしまっている。」
ジョナサン・ハイト (Jonathan Haidt) 1

より良く仕事するためには、もっと休みなさい!

ハッスル・カルチャーが今流行しています。痛みなくして得るものなし。働いて、働いて、働いて。睡眠は弱者のためのもの。働いてないということは、怠慢である。というように。

そうではありません。

多くの研究が証明しているのは、睡眠 (7、8時間の良質な睡眠) と休暇を取ることで、生産性が向上するということです。既成概念に捉われない思考を促進するのです。よりクリエイティブでより良いアイデアを生みだすのです。

休息は非常に重要です。休暇を取ることが重要なのです。

しかし、それは簡単なことではありません。アメリカでは、若い社員の有給休暇は平均して10日程度であり、勤続20年目になってはじめて20日前後の取得ができるようになります2。日本では、義務付けられた10日間の有給休暇を取る人がほとんどいないため、政府がたくさんの祝日を設けています3。ヨーロッパでは休暇をめぐる状況はそれらの国に比べたら良いようです。多くの国が従業員に20日以上の休暇を取ることを法律で義務付けています。

私の母国であるポーランドでは、従業員の年数に応じて21日または26日の有給休暇が法律で定められており、さらに最低でも2週間の連続した休暇を取ることが求められています。

なぜ休暇を取ることがそんなに難しく、しかしとても重要なのか?

なぜなら、やるべき仕事が常にたくさんあるからです!また、小さな会社を経営していると、リソースが足りないと感じることがしばしばあります。人がいないと何もできないこともよくあるのです。

これがよくある落とし穴で、私も同じことをしていました。Nozbeをスタートさせた最初の数年間は1人で運営していましたが、その後3人になっても、私は常にそこにいなければならないと感じていたことを覚えています。

メールをチェックしたり、自分のタスクをチェックしたり、全てのものをチェックする必要がありました。

私は当時妊娠中の妻と2週間の休暇を取ったことを思い出します。それは子供のいない夫婦としての最後の休暇でした。あと数ヶ月で娘が生まれる予定でしたので。二人で楽しい時間を過ごすはずでしたが、会社のことが頭から離れない私のせいで、とうとう妻をイライラさせてしまいました。それから仕事を完全に切り離すまで1週間以上かかりました。それはつらい経験でした。私は自分のビジネスのやり方を変えなければならないことに気づきました。

ここでのさらなる問題は、小さな会社を経営している時に身につけた悪い習慣は、やがてビジネスが拡大していくとともにそれも拡大していくということです!働きすぎているとしたら、働きすぎを続けることになるでしょう。数日間あなたなしの状態に会社が慣れていないとしたら、その会社はうまく機能しないでしょう。

そして、誰もが休息を必要とします。前章で人付き合いについて述べたように、私たちには仕事以外の生活が必要です。旅行に行ったり、家族と過ごしたり、良い小説を読んだりすることです。完璧にそして完全に仕事と切り離す時間が必要なのです。

そして、ビジネスは私たちがいなくても十分に機能する必要があります。全速力ではなかったとしても、とにかく機能することです。自分がビジネスの中心であるフリーランサーであったとしても、仕事の合間には充電が必要です。

良い休暇の方針と実践について

これまで何年にもわたって私たちは様々なことを試し、そして多くの企業からのアドバイスも参考にしてきました。以下、チームに有給休暇を導入する際の私からのベストヒントをご紹介します:

十分な有給休暇を取得できるようにする

アメリカや日本の平均に倣わないでください。少なくとも20日の有給休暇が世界的な標準であるべきだと私は思います。

私たちは当社のポリシーを見直し、チーム全員が平等に取得するようにしました。勤続年数などばかばかしいものです。私たちは27日という有給休暇を導入することで、若い人材を惹きつけることができます。

会社によっては、有給休暇を使わない分はそれに相当する給与をもらえるようにしているところもあります。しかし、私たちはそれを認めていません。未消化の休暇をお金に換えたくはないのです。社員に休みを取ってもらい、休養してもらいたいのです。

2週間、3週間の長期休暇を計画する

チームのメンバーは、2週間、または3週間の休暇を取ることは全く問題ないということを知る必要があります。ビジネスはそのための準備をしておかなければなりません。

しかし、彼らは長い休暇を取ることにまだしばしば躊躇することがあるようです。

そのため、四半期ごとのレビューをする時に (第16章参照) 休暇状況を確認し、上半期にまだ長期休暇を計画していない場合には、下半期に計画してもらうようにしています。最低でも2週間の休暇を取ることが必須であり、3週間の休暇も取れるようチームメンバーと協力しています。このような長期休暇を取る際には、関係者と一緒に計画的に準備する必要がありますが、長期休暇の後にはリフレッシュして仕事に臨むことができると多くの人が報告しています。長期休暇も半ばが過ぎる頃になると、仕事が恋しくなってくる人もいるようです。

休暇中は仕事を控える

私たちNozbeでは、CTOのトムは私たち皆にとって必要不可欠な存在なので、休暇を取ることを許されていないと冗談で言っています。しかし、徐々にではありますが、彼がいなくても機能するように、また、彼が家族との休暇を思う存分楽しめるようにするために、私たちは対策を講じ始めました。

過去には、旅行中の彼に電話をかけてしまうという悪い習慣もありました。彼のほうでも、家族と休暇中にタスクやメッセージをチェックしてしまうという習慣がついていました。これは正しいことではありませんし、公正でもありません。今では私たちはそのやり方を変え、彼に負担を掛けないようにしているので、彼は休暇を以前よりも楽しめていることと思います。また、彼が休暇を取っても私たちは慌てることがありません。

もう一つの問題は、チームに新しく加わった人たちのことです。新しい人が入社すると、以前の職場での悪い習慣を持ち込んでしまうことがあります。例えば、休暇中に仕事をチェックすることを期待されることなどです。会社の方針を明確にすることで、そのような行動をしないようにしてもらいます。休暇中であるべき人からメッセージが来たら、仕事から離れて休日を楽しむように伝えます。そうすると、次第にそのメッセージが浸透していきます。

時間がかかりますが、こうすることで自分自身だけでなく、関係者やチーム全体に休暇中は仕事を離れるということを期待する文化が生まれます。誰かが1、2週間休む時には本当に休むのであり、私たちチーム全員がそれを受け入れる必要があります。

唯一の例外は、休日の写真を #ランダムチャットチャンネルに投稿する場合です。これをポストするために仕事のパソコンを開くのは許されています。しかし、休暇から仕事へ戻ってから投稿すればいいだけの話ですが。

人々の休暇に備える

準備が重要です。ビジネスもチームも人がいなくなることに対して備えていなければなりません。少なくとも長期休暇に入る一週間前には準備を始め、仕事の配分を変えなければなりません。直接一緒に仕事をする人皆が準備するべきです。

たとえ全ての準備が整っていても、重要な人がいなくなると物事はうまくいかなくなるかもしれません。問題が起きたり、大変な事態が発生するかもしれません。そこで、彼らが仕事へ戻ってきたときには、そういった問題を記録し、同じような問題が再び起こらないように長期的な解決策を考えなければなりません。そうすることでビジネスは改善され、チームは強くなり、次の休暇の際にはより静かに過ごせるようになるのです。

病欠については?

在宅で仕事をしていることのプラスの点は、病気にならないことです。少なくとも、人々は病気になったことを認めません。どうせ家にいるんだから、そうですよね?ノートパソコンをベッドへ持ち込んで、いつも通りの仕事をこなすだけです。

そうではありません。実は、これが厄介なところなのです。

繰り返しになりますが、体調が優れないことを認めてあげるような、オープンなチーム文化を作るという問題につながります。そのような場合には、その人にリラックスして病欠を取り、1日か2日経っても治らない場合には医者へ行くように伝えるのです。彼らに仕事をするのを止めるよう積極的に言わなければなりません。

自宅で仕事をしていても病気になることももちろんあるのです。全てに免疫力があるわけはないのです。無理して仕事をしてはいけません。自分は大丈夫だとは思ってはいけません。病欠を取り、心と身体の電池を充電しましょう。決してノートパソコンをベッドに持って行ってはいけません。

休暇・病欠の届出方法について

現実的な話をしましょう。私たちには共有プロジェクトがあり、そこでは休暇をオープンにポストできるようにしています。このプロジェクトでは、誰もが自分の休暇をリクエストするタスクを追加できます。タスク名には自分の名前や休暇の日数、それから休みになる日付を記入します。

以前、私たちはこのシステムを使って休暇を申請し、上司に休暇を求めるようにしていました。しかし、休暇はほとんどいつも許可されていることに気づきました。そのため、許可を求めるプロセスは必要ないということになりました。

そこで私たちは簡略化しました。

休暇を申請する前に会社のカレンダーを確認し、同じような役割の人と休暇が重なる可能性がある場合には、その人や周りの人と相談するというようにしています。お互いに相談して確認したら、チームに休暇を取る日を報告します。承認は特に必要ありません。自分の休暇を会社のカレンダーにも追加し、誰もが見ることができるようにしています。経理担当者はカレンダーからそれらの休暇を追跡し、全員が実際に休暇を取っているかを確認します。

無制限の休暇の場合

最近、シリコンバレーの企業の中には、休暇を無制限に与えることを自慢しているところも出てきました。必要であれば、欲しいだけ休暇を取ってください。それを追及したりしません。ただ取ればいいのです。問題ありません。

しかし、このようなやり方はちょっと聞いただけだと素晴らしく聞こえますが、それらの実験はほとんど失敗しているようです4

誤解しないでいただきたいのですが、これは実際素晴らしいことです。願わくば、これらの試みによって、アメリカの企業がこれまでの哀しい10日という休日からせめて20日にまで近づけばいいなと思っています。しかし実際には、何日の休暇を取ったかを把握しなくなると、休暇を取ることをほとんどしなくなってしまったのです。上司が休暇を取ったとしても、チームメンバーはそれと同じだけの日数の休暇を取ることを恐れるようになってしまったのです。何しろ、彼らは重要なプロジェクトや目標、締め切りなどたくさんの仕事を抱えているのですから。本当に仕事は忙しいのです!

だからこそ私は、無制限の休暇という概念を捨て、数字にこだわることを強くお勧めしています。20日でも、私たちのように27日でも、できればそれ以上でも構いません。重要なことは、それを守り、チーム全員の休暇を記録し、皆が必ず取得するようにすることです!

世界的なパンデミックの時代の休暇 - ステイケーション!

ここで、近年の最悪の年の一つである2020年の話をしましょう。3月以降、全世界で半永久的とも思えるロックダウンが大規模に起きました。これでは休暇どころではありません。どこに行く場所があるというのでしょうか?旅行もできない、人付き合いもできない、家にいて人との距離を保つしかないという状況です。

これは私たちにも起こったことです。仕事やパンデミックの対応に追われていたため、チームメンバーの多くがその年にあまり休暇を取っていないことに気づきませんでした。そこで、10月に入ってから行動を起こし、休暇の計画を立てるよう駆り立てました。

しかし、これには気が進まない人がいたり、反対する人もいました。私は何をしたらいいの?どうせ家にいなければならないのだから、仕事くらいしてもいいんじゃない?しかし、それは違います。そこで、私たちは ステイケーション と呼ばれる、家にいながら休暇を取る計画をしてみてはどうだろうかと皆に提案しました。ボードゲームをしたり、映画を観たり、読書したり、安全なやり方でスポーツをしたり、パソコンをオフにしたり。あるいは、何かを作ったり、ずっとやろうと思っていた家のリフォームをするというのもいいでしょう。仕事以外にやりたいことをやってみるのです。

その結果、12月中旬から2021年1月上旬までに社内の半数以上が半ば強制的に休暇を取るように促しました。そして、それは素晴らしいことでした。人々は仕事から一旦離れてリラックスし、これまで以上にエネルギーに満ちた状態で新しい年をスタートすることができたのです。

サバティカル休暇については?

会社によっては入社してから数年後に1ヶ月程度の有給サバティカル休暇を提供しているところもあります。一般的には勤続年数が3年以上ある場合に、30日間の休暇を取ることができるというものです。

私たちの会社ではまだこれを公式には実施していません。私は2018年の初めにこのようなサバティカル休暇を取り、2020年には半分程度のサバティカル休暇を取りました (Nozbeに集中するのではなく、本書の執筆に専念するためです)。それを終えた今、私はこれまで以上にこのサバティカル休暇のポリシーをチームへと導入したいと考えています。

しかし、企業がサバティカル休暇を導入する前には、まず十分に手厚い有給休暇日数が社員に提供されているかどうかを確認することをお勧めします。この章の始めにも述べたように、20日以上の有給休暇は必須です。これには政府が定めた祝日は含まれません。

私たちの場合、27日の有給休暇に加え、政府が定めた13日の祝日があります。これで40日分の休暇となります。一週間のうち5日が仕事をする日なので、合計すると8週間の休み、つまり1年のうち15%が自由に使えることになります。悪くないでしょう?

1つのキーポイント: 休暇を取りましょう!

チームの皆に休暇を率先して取るように勧めてください。旅行の予定がなく家にいる場合でも、仕事から完全に離れるようにしましょう。充実した休暇制度を導入し、それをきちんと管理し活用することで、関係者全員に健康的な職場環境を提供することができ、ビジネスの健全性や活気も向上するのです。

このテーマをさらに掘り下げたい方には、ジョナサン・ハイト (Jonathan Heidt) の著書をお勧めいたします 1

  1. ジョナサン・ハイト (Jonathan Haidt) の著書: The Happiness Hypothesis: Finding Modern Truth in Ancient Wisdom: NoOffice.Link/happiness  2

  2. アメリカ合衆国労働統計局の2018年のレポート: NoOffice.Link/vacations 

  3. こちらのQuoraのスレッドを参照: NoOffice.Link/japantime 

  4. Rework podcastのこのエピソードでは、無制限の休暇を試みて失敗した企業のケースについて話しています: NoOffice.Link/vpolicy 

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