- リーン であることとは効率的であることを意味する
- カイゼン数学 - 数秒を節約することは本当に意味があるのか?
- いかにして リーン をチームに導入するか
- カスタマーサポート部門でのカイゼンの事例
- 1つのキーポイント: 改善の手を止めるな!
リーン であることとは効率的であることを意味する
リーン生産方式1 という言葉は、トヨタの工場における生産管理手法に由来しています。自動車を製造する際に小さな非効率性をコンスタントに修正していくことで、長期的には指数関数的にコストを節約でき、生産性の向上にもつながることを日本の自動車メーカーは発見しました。実は、これは自動車メーカーだけでなくあらゆるビジネスに大きな利益をもたらしうるものなのです。
リーン であるということは、あなたが常に改善に目を向け、時間やリソースを無駄にしている場所を見極めるということを意味します。作業に取り組みながら、それをもっと最適化したり合理化したりする方法がないかと探るのです。それは改善を決して止めないということを意味します。
ここで覚えておいてもらいたい2つの日本語があります:
1つ目は、不経済的や空費 を意味する ムダ です 2。毎日コピーペーストするだけの作業に5分かかりますか?もしかしたら、それは自動化できるかもしれません。あまり意味のない会議ばかりやっていると感じていないでしょうか?もしかしたら、会議の意義や開催を見直す必要があるかもしれません。会議の目的を他の方法で達成できないでしょうか。1日のどこかで時間を無駄にしてはいませんか?どこかでリソースを無駄にしてしまってはいませんか?
2つ目は、継続的に改良していく ことを意味する カイゼン です 3。これは、物事には常に改善の余地があることを前提としています。クリックやステップを1つだけ減らしてみましょう。毎回20行のコードを書く代わりに、関数を使って5行にしてみましょう。改善による変化はスケールの大きいものである必要はありません。何かの位置をちょっと左から右へ変えるだけでも、トータルの作業が数秒改善されることもあるのです。それが1日積もれば数分の節約となり、1週間や1ヶ月になると数時間の違いとなるのです。
カイゼン数学 - 数秒を節約することは本当に意味があるのか?
弊社のエンジニアVPのラデク4 が最近、「カイゼン数学」や改善の捉え方などについてチームに説明をしてくれました。彼は、何かを改善する際には次のように考えた方がいいと主張しています:
ある作業をする度に 余計に1分 かかっていて、改善の余地があると気づいた時には、それを修正し最適化するためにおよそ 1時間 を費やしても構いません。
それがチーム全体になれば、もっと時間をかけていいのです:
ある作業に対して チームの全員が1分をムダにしていて、あなたに改善のアイデアがあるのであれば、4時間 をかけてそれを改善しても構いません。
なぜ1分だけの小さな改善に何時間もかける価値があるのか?
なぜなら、そこには複利の効果があるからです。最初はたった1分だけの節約なのですが、後々それが積もっていき、結果的にかなりの時間の節約になります。また、1分という貴重な時間を失ってしまうという焦燥感が解消することにもなります。さらに次の改善につながり、より良くなることもあります。時間を無駄にしなくて済むだけでなく、仕事がとても楽しく感じられるようにもなるのです。
カイゼンの計算では、1日に1分の時間を無駄にすることを10回行ったとすると、1週間で50分になります。それを修正するために1時間を費やしたとしても、わずか1週間ほどで取り戻せます。次の週からはその1分を全く無駄にすることはなくなるのです。
1つ1つを修正して「改善の刃」を鋭くしていく
刃を研ぐ とはどういう意味でしょうか5。のこぎりで木を切る前に、のこぎりの刃を研ぐのに時間をかけることで、結果としてより効率的に木を切ることができるようになります。
それと同じように、仕事の作業に改善を加えることで、作業がより効率的で簡単になるのです。身の回りの ムダ を徐々に見つけていき、少しずつ カイゼン を実行していくのです。
そうすれば、小さな変化の積み重ねで節約された時間が複利的に増えていくのを実感できるでしょう。あなたが皆のお手本となるような行動を重ねることで、周りの人も同じように小さなカイゼンを積み重ねるようになるでしょう。物事を改善したり、プロセスを合理化したり、単純化したりするということはかなりの伝染力を持っているのです。
改善はイベントではなく、考え方の変化である
リーン の考え方の根底にあるもの、それは 生き方 です。それは一度で終わってしまうイベントではなく、仕事への新しいアプローチなのです。カイゼンは 継続的な 改良を意味し、それは決して止まることのないプロセスなのです。
全てのものは改善が可能なのです。常に改善の余地があるのです。常にです。
とは言うものの、ここで私は少しだけ矛盾したことを言うかもしれません。というのも、改善の考え方を持つためには、時にはイベントという枠組みから始めなければならないこともあるからです。
いかにして リーン をチームに導入するか
それは簡単ではありません。人はこれまでずっとやってきた自分のやり方に慣れています。あなたは忍耐強く、手本を示し続けなければなりません。決して諦めず 前へ進み続け なければなりません。そこで、私たちがリーンの導入を始めた際に取り入れていたアイデアを以下にいくつか紹介したいと思います。
アイデア1: フィードバックのイベントを定期的にスケジュールする。
意思決定に関する前の章の中でも触れましたが、私たちは決定事項を導入した後で、それを振り返ってレビューし改善すべき点がないかを考える 教訓 会議を定期的に開いています。その会議の目的は、もっと良い方法で行うことができないかどうかについて、全ての可能性を考えるということです。
そうですね、それはまさに カイゼンのイベント であり、先ほど私が言った、改善はイベントではない、とは反対のことですが、私の経験では、そのようなイベントを通して人は改善の可能性に目を向けるようになり、潜在的な考え方を変化させていくようになります。そして、人は次第に開眼していくのです。
ここでぜひ皆さんに忘れずにやっていただきたいことは、毎週金曜日にあなた自身の1週間をレビューするということです。あなたの直近の1週間を見返し、どのように過ごしていたか、そのうちムダがどのくらいあったか、どうすれば次の週をもっと良くすることができるか、といったことをフィードバックします。そして、それが自然に行えるよう習慣化してください。
アイデア2: 何をするにもフィードバックをセットにする。
「コミュニケーションのピラミッド」を覚えていますか?その2番目のレベルは フィードバック でした。私たちは、フィードバックを与えるということを 私たちの仕事としている のです。フィードバックには改善への提言を伴います。自分自身の仕事に対してよりも、他の人の仕事に対して改善を提案する方が簡単です。
以前の章でも述べてたように、私たちはプログラマーの誰かが完了した仕事に対して「コードレビュ」をする時に、タスクや段落、コードに直接コメントを付けてフィードバックするようにしています。
他の人からのフィードバックを積極的に取り入れましょう。それなくしてあなたの仕事はほとんど改善されないと言っても過言ではありません。
アイデア3: できるかぎり自動化する!
繰り返しの作業や大量のコピー&ペーストなどといった頭を使わない作業は、一方でフラストレーションが溜まってしまうものです。そのような作業はあまりやるべきではありません。私たちは反復的な作業にではなくクリエイティブな仕事にこそ貢献すべきです。
そのため、以下の例のように、可能な限り作業を自動化しましょう:
- サーバーにスクリプトを学習させ、サーバーセットアップを自動化しましょう。
- Automatorやbashなどを使ってコンピューター上で作業を自動化しましょう。
- iOSのSiri ショートカット を利用し、iPhoneやiPadで行う反復的な作業を高速化しましょう。私は本書を書いている時にも、各章をフォーマットしてNoOffice.org サイトに投稿するのに役立つスクリプトを作って使っています。
- AndroidのAutomateやTaskerを使って作業を高速化しましょう。
- 自動化の機能が備わったアプリやウェブもたくさんあります。マーケティングの自動化アプリや、ソーシャルメディア投稿アプリなどを幅広く利用して、仕事の負担を減らしながら バックグラウンドで 作業を行わせることも可能です。
- ウェブアプリ間の作業を自動化してくれるウェブアプリもあります。プログラミングの知識がなくても利用できます。簡単なチュートリアルに従うだけです6。
- プロジェクトやタスクのテンプレートを作成しましょう。同じことを一から繰り返さないようにしましょう。オンボーディングプロセスで顧客や社員に同じことを繰り返すような場合には、オンボーディング・テンプレート を作成しておき、毎回それを使いましょう。
アイデア4: 単純化して参加への抵抗を減らす。
これまでの章でも見てきたように、私たちは物事を単純化するのを意識しています:
- 会議を「毎週、任意で」同じ時間に、同じバーチャルルームで、同じ人々で開催するようにしています - 何の会議がいつどこであるのか、誰でも簡単に頭に入れておくことができます。
- 各会議はカレンダーに入力され、そこにはバーチャルルームへのリンクが貼ってあるので、カレンダーアプリからワンクリックで会議に参加できます。
- 私は個人的に毎食同じ時間に食べるようにしているので、仕事と休憩のリズムをうまくスケジュールするのに役立ちます。
- いつ会議があるかが把握できるので、誰にも邪魔されない2時間の「集中作業」の時間を簡単にスケジュールできます。
チームワークの様々な側面で、物事を単純化し参入障壁を下げることで、さらなる最適化への目が開かれるのです。それが 私たちが行う仕事 となるのです。
アイデア5: あなたの改善をアピールする。
これは私たちチームでももっと実践すべき課題でもあります。あなたが何かの作業を最適化したり効率化を図ったりしたら、それについてのショートビデオやスクリーンショットでのプレゼンテーションなどを作ってみてください。何が不満な点だったのか、どうやってそれを修正したのか、改善した後はどのように機能しているのか、などを簡単に説明してみましょう。
基本的にはビフォーアフターの動画を見せましょう。これが一番インパクトがあります。
カスタマーサポート部門でのカイゼンの事例
もう一つ皆さんの参考になるかもしれない リーン の実例を挙げて、この章を締めくくりたいと思います。
1年以上前のことになりますが、弊社のカスタマーサポートにおけるいくつかの対応が、私たちの標準レベルを満たしていないということがありました。私たちは、私たちのカスタマーケア部門を数ある会社の中でもトップクラスのものにしたいと考えているので、このことは問題でした。そこで私は、カイゼンを念頭において、サポートメールのやりとりを毎週レビューすることを提案しました。
毎週、サポートチームの一人が (毎週交代で)、顧客との過去のメールのやりとりをレビューし、問題のあるものを10個ほど選び、それをレポートにして報告するというものです。それから、そのレポートを皆でレビューし、担当者とイボナ (部長)、そしてCEOである私の3人でミーティングを行って詳細を検討します。
一つ一つのケースについて丁寧に分析していきます。レポートの中ではやりとりを全て匿名化しているので、カスタマーサポート担当の誰が書いたメールか、どの顧客とのやりとりなのかといったことは分からないようになっています。ここでは だれが ではなく、何が起こったか、今後それをどのように改善していくか、ということにフォーカスします。
このプロセスを導入したことで成果が見られました:
- 「カイゼンのイベント」として始まり、次第にカスタマーサポートの各担当者全員がどこに改善できる可能性があるのかということに常に目を配るようになりました。
- ミーティングを重ね、改善をしていく中で、より深く問題に対して洞察していかなければなりませんでした。そのため、次第に「改善の刃」は研ぎ澄まされていきました。
- 週を重ねるごとに、チーム全体がより良い方法を自発的に見つけようと努力し、顧客とのやりとりをもっと改善したいというモチベーションが非常に高まったということを課長であるイボナも証言していました。
- テンプレートの使用率がぐんと上がりました。もちろん担当者個人個人によって対応の仕方は異なりますが、基本的にはまずテンプレートから始めるようにし、それをそれぞれの顧客のケースに合わせてカスタマイズしていくというやり方を取ることで、より一貫性のある対応ができるようになってきました。
- 改善へのアイデアが組織のトップから来るのではなく、現場に立っている各担当者から出てくるようになり、それをとてもやりがいのあるものと皆が認識するようになってきました!
1つのキーポイント: 改善の手を止めるな!
チームに リーン を導入し、まずは自分から仕事の中に ムダ を見つけて、カイゼン に基づいて仕事を改良していきましょう。あなたが皆の模範となるよう行動し、常に物事を改善していく姿勢を皆に示してください。そうすれば、あなたやチームが創造的な仕事にフォーカスできる時間が増え、これまで以上に仕事に喜びを感じることができるようになるでしょう。大きな改善を求めるのではなく、小さな改善を積み重ねていくということを忘れないでください。たった数秒の改善が、積み重なると数分、数時間の差になるのです!
リーンについてさらに詳しく学びたい方は、ポール・エイカーズ (Paul Akers) の名著2-second lean を読むことをお勧めします [^7]。
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ラデク・ピエトルシェフスキ (Radek Pietruszewski) はまた、私と一緒にThe Podcast の共同ホストをしています。 ↩
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この言葉は スティーブン・コヴィー (Stephen Covey) 著 7つの習慣 (7 Habits of Highly Effective People) の中で作られた言葉です。 ↩
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私は IFTTT - “If This Then That” や Zapier のようなアプリをお勧めします。そして、Nozbe PersonalやNozbe Teamsはそれらと連携して使えます。[^7]: ポール・エイカーズ (Paul Akers) 著書 - 2-second lean。彼のYouTube チャンネル でも彼の改善への取り組みについて学べます。 ↩