Book: No Office » 第2部 - 「オフィスがもしなかったら?」 » 第19章 - 紙を捨ててモバイルへ [Draft] 第30章 - 安全性を確保しよう | mobile.md

第19章 - 紙を捨ててモバイルへ

現代のビジネスは、クラウドの仮想キャビネットで、ペーパーレスとモバイルの時代である。

信頼をテクノロジーにまで広げよう!

前の章ではチーム内での信頼の問題を扱いました。今度は、それをさらに現代のテクノロジーにまで広げてみましょう。2020年、人々はデジタルでペーパーレスな世界 クラウド をより楽しみ、どこからでもデータにモバイルアクセスできているはずです。

しかし、全てのドキュメントをオフィスに置いていたとしたら!?

法律は適用されるのに最も時間がかかりますが、多くの国ではペーパーレス化がすでに実現化されつつあります。もしもの時のために書類を保管するという習慣に慣れているのは、多くの場合、昔ながらの経理担当者です。

オフィスに行く理由が書類にアクセスするためだとしたら、それは間違ったやり方です。

現代の企業は紙のドキュメントをデジタルなものに変換するプロセスを持つ必要があります。今日のスキャナーやスキャン用アプリは、それを迅速に行ってくれるだけでなく、スキャンしたドキュメントにOCR1を実行することを可能にしています。こうすることで、デジタル化された文書を簡単に検索することを可能にするのです。

物理的な紙のフォルダを一枚一枚調べて古い領収書を探し出すというのはもう過去のことなのです。デジタルの世界では一瞬にして探し出すことができます。

ステップ1 - ペーパーレス化のプロセスを作成する

繰り返しになりますが、高価なスキャナーは必要ありません。いずれにせよ、デスクトップ型のスキャナーは比較的安価ではありますが。専用アプリを使ってスマートフォンのカメラで2 スキャンできます。

ここで重要なことは、ドキュメントを全てスキャンすることを習慣にすることです。例外はありません。全てがデジタル化されるのです。

ステップ2 - クラウドの力を利用する

一度スキャンしたものはローカルコンピューターに保存するのではなく、即座にサーバーにアップロードする必要があります。こうすることでどこからでもドキュメントにアクセスできるというメリットが生まれます。

たくさんの有名なクラウドストレージプロバイダーがありますが、繰り返しになりますが、それらは非常に手頃な価格です3。会社の中には、ドキュメント保管用のサーバーを自社で運用し保守しているところもありますが、ほとんどの場合、私はそのようなことをお勧めいたしません。自分でインフラを管理するのは大変な作業だということが挙げられますし、クラウドプロバイダーを利用することでさらなるメリットが得られるのです:

いろいろなものがリンクされる

クラウドプロバイダーにファイルをアップロードしたら、簡単にそれにリンクすることができるようになります。これにより、一緒に仕事をしている人にデジタルドキュメントを送ることも簡単にできるようになります。リンクを取得するだけで、どのブラウザからでもアクセスできるようになるのです。

また、ファイルやドキュメントへのアクセスを制限することで、リンクを一定期間のみ有効にしたり、特定の人だけにしかアクセスできないようにしたりすることも可能です。

ファイルが適切にバックアップされる

どのクラウドプロバイダーもバックアップについてはかなり深刻に考えています。私たちも同じです。顧客のプロジェクトやタスク、コメント、ファイルなどをどのように保存しているのかと聞かれると、私はそれは私たちの最優先事項だといつも答えています。私たちはデータのコピーがある複数のサーバーを用意し、インフラを可能な限り冗長にしておくようにしています。また、異なる大陸にデータセンターを設置しています。そう、私たちはかなりの心配性とも言えますね。

クラウド上のデータの安全性について問題にする人がいるとき、私はこのように聞き返します: 「誰かがあなたのオフィスに侵入したり、何らかの理由で火事になったりしたらどうしますか?」と。すると、ぽかんとした顔の反応をもらいます。オフィスに唯一無二の文書のコピーがあり、それが破壊された場合、基本的にあなたは台無しになってしまうのです。

モバイルアクセスはもう当たり前

今は何でもアプリがありますし、クラウドベースの企業もアプリを開発していたり利用していたりします。すると、ドキュメントをスキャンしてクラウドにアップロードした瞬間からすぐに、スマートフォンからアクセスできるようになります。それほど簡単なことなのです。そのクラウドフォルダーにアクセスできる人は誰でもその中にあるドキュメントを見たり、作業したりすることができます。オフィスへ取りに戻る必要はもうありません。

コラボレーション機能が内蔵されている

最近ではほとんどのクラウドプロバイダーがドキュメントやファイルでコラボレーションできるような機能を提供しています。第10章でも述べたように、良いフィードバックというのは コミュニケーションのピラミッド において2番目に重要な部分です。クラウドプロバイダーにはこの機能が組み込まれているので、どんなファイルにも、どんな文書の一節にもコメントを付けることができるようになっています。そのため、ファイルについての重要な会議に参加するために、同僚と同じ物理的空間にいなければいけないという必要はありません。

第6章で説明したように、メールでコラボレーションすることについての私のスタンスについてはご存知かと思いますが、もうスプレッドシートのドキュメントをわざわざ送信する必要もないのです。オンラインのスプレッドシートを使って、そのドキュメント上で直接コラボレーションした方が簡単です4

安全性へのアクセスも簡単に管理できる

クラウド ソリューションの利便性が好きだからと言って、セキュリティを窓から捨てなければならないということはありません。全くそんなことはありません。クラウドプロバイダーへのアクセスは簡単に管理でき、チームの誰もが自分の認証情報 (通常はEメールとパスワード) を使ってログインできます。

最近では、2FA 5が当たり前になってきており、ログインするためにはスマートフォン上のコードのようなもう一つの トークンデバイス が利用するようになってきています。このようにすることで、たとえパスワードが脆弱であったり盗まれてしまったとしても、誰かがあなたの機密情報にアクセスすることを不可能にしするのです。

暗号化も選択肢の一つになり始めている

人々がプライバシーをより意識するようになるにつれ、暗号化も簡単に導入できるようになってきました。チャットアプリがエンドツーエンド暗号化を導入し始めると 6、他のアプリやクラウドプロバイダーも完全な、もしくは一部の暗号化を導入し始めるようになりました 7

真のモバイルアプリを使うことが本当に重要である

ファイルやドキュメント、プロジェクトなどを保存する方法を選ぶとなると、モバイルプラットフォームを完全にサポートするソリューションを見つけることが重要となりました。モバイルアプリは単なる コンパニオンアプリ ではなく、より堅牢な、外出中でも仕事を可能にするものであるべきなのです 8

私は#iPadOnly ライフスタイルを支持する者であり 9、iPadを私のメインコンピューターとして、そしてiPhoneを第二のコンピューティングデバイスとして使っています。私は今こうしてiPad Proで書いていますが、私のタブレットを一流の市民にしてそれをしっかりとサポートするソリューションを使うべきだということを私は主張しています。また、iPadを持っていないときでも、iPhoneでも同じオペレーションシステムを提供しているので、外出先でも必要に応じて、いつでも仕事を済ませることができるのです。

それは何も24時間/7日間仕事をするべきだと言う意味ではなく、次の章でお話しするように通知と非同期で仕事をするという意味なのです。ここで言いたいことは、どのデバイスでも生産的に仕事ができるオプションを誰もが持っているということです。そうして、オフィスの自分のパソコンの前に座ったら やっと仕事ができるという考えを改めることができます。

Nozbeではこのことをとても大切にしています。モバイル版が全く役に立たないという理由だけでとても有名なソフトウェア製品の使用を止め、代替品を探し求めたことを私は今でもよく覚えています。

VPNサーバーを使ってセキュリティを追加できる

ブロードバンドのインターネットアクセスや堅牢なサーバーを利用して、最近では自分でVPNサーバーを構成したり、VPNサービスを利用したりすることがとても簡単にできるようになりました 10

私たちも社内用のウェブサイトやリソースへのアクセスを制限するためにVPNサーバーを利用しています。それらのサイトやリソースへは、私たちのVPNサーバーである一つのIPアドレスからしかアクセスできないように設定してあります。ぜひ皆さんもアクセスできるか試してみてください 11

新しく誰かがチームに加わると、その人はVPNへのアクセスをもらい、そして会社の全ての資料などにアクセスできるようになります。誰かが会社を辞めるときは、簡単にその人の資格情報を消去することができるので、こっそりと情報が漏れてしまうという心配をする必要もありません。

従来ではない形でソフトウェアを使うことを恐れるな!

私の会社ではプログラマーたちはGitを使って共同作業をし、GitHubを使って作業のコードをホストしたりしています。開発の仕事に使えるのならば、共同執筆にも使えるはずではないでしょうか?私たちのカスタマーサポート部でもそれを使ってNozbeヘルプページやドキュメントを編集しています。マーケティング部でもセールスレターやメールのニュースレターなどをGitを使って作業しています。私はGitを使ってオープンソースで本書を執筆していますが、誰でもGitHubのプルリクエスト技術を使って編集を提案することが可能です 12

ソフトウェアのライターのために機能するものが、他のライターのためには機能しないなどとは誰が言ったのでしょうか?

1つのキーポイント: 現代の新しいテクノロジーをフルに利用するべきである!

モダンな企業やチームはデジタルな世界を積極的に受け入れ、完全なペーパレス化とモバイル化に移行すべきです。そうすることで、全てのものが物理的なオフィスよりも安全に保管され、さらに必要な時に必要な人がどこからでもアクセスできるようになるのです。それこそが正しい#NoOfficeの働き方なのです。

  1. OCRはOptical Character Recognition (光学文字認識) の略記です。それはスキャンされた言葉を、魔法のようにコンピュータで検索可能なものに変換します。 

  2. そのためのアプリはたくさんあります。過去に私はEvernoteScanPro+ を使っていました。iPhoneやiPadのiOS でも内蔵されています。 

  3. 有名なものとしては DropboxBoxGoogle DriveMicrosoft One Drive などがあります。 

  4. 第13章でも述べた、私たちのチームで使っているサラリー数式は AppleのNumbersというアプリ のオンラインスプレッドシートのドキュメントです。GoogleスプレッドシートMicrosoft 365 Excel でも代用できます。 

  5. 2FAまたはMFAは Multi Factor Authentication (多要素認証) の略です。 

  6. 暗号化を得意とするチャットアプリがあります: AppleのiMessageTelegramWhatsApp、またはSignal などです。 

  7. 例えば、Nozbeアプリのタスクに添付されているファイルは全て暗号化され保管されています。別のサーバーに暗号キーが保存されています。現在、プロジェクト名、タスク名、およびコメントの暗号化を導入する作業にも取り組んでいます。 

  8. 私たちがデスクトップに負けないくらいパワフルなモバイルアプリ作ることにこだわっているのもこのためです。デスクトップのNozbe PersonalやNozbe Teamsアプリでできることは、モバイルアプリでも可能です。さらに、それらはオフラインでも使えます。 

  9. 2013年に私は友人のアウグスト・ピナウド (Augusto Pinaud) と共同で本を書きましたが、ウェブ上で無料でお読みいただけます: #iPadOnly - the first real post-PC book - how to use only your iPad to work, play and everything in between (ポストPCについての最初の本 - iPadだけを使って仕事や遊び、それら全てを行う方法)。 

  10. VPNはVirtual Private Network (バーチャルプライベートネットワーク) の略記であり、基本的にはインターネットを利用して、同じ物理的空間で直接接続しているかのようにコンピュータを接続することを意味します。 

  11. 私たちの社内専用ウェブサイト “Nozbe.team” にアクセスしてみてください。アクセスできないことが分かると思います。 

  12. 私はGithubがどんな共同執筆の環境にも使えるということを書いてみましたこのプロジェクトについてのページで、どのように本書を書いているかを説明しました。 

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